ロボトミー

そんな「カッコーの巣の上」で後半に出てくるロボトミー手術。とってもおそろしいな、、、と思いながらみていたあの治療は、現実でも行われていました。1935年、精神外科で画期的な治療法とされ行われていたのである。その標準的なロボトミーのやり方について、すこし説明しておくと、先ず、コメカミのあたりにキリきりと小さい穴をあけ、その中に細い刃を突き刺し、手探りでグリグリと動かし、前頭葉の白質を切断する。以上。ううう、アバウトすぎるやろ!これでノーベル賞だっていうんだから、当時の雰囲気ったら、おっかない><。

精神外科は、かつて散発的に流行した、脳に外科的手術を行うことにより精神疾患の治療が行えるとした医療分野であった。代表的なものにロボトミーがある。のちに、脳神経外科学となる。

術式

モニス術式
両側頭部に穴をあけ、ロボトームという長いメスで前頭葉を切る。
経眼窩術式
麻酔の代わりに電気痙攣ショックを行ない、まぶたの辺りからアイスピックを差し込む手術で10分程で終わる効率の良さが売りの術法。眼窩の骨の間から切断すべき脳の部分に到達する。外側からみえる傷跡がないというメリットがある。
眼窩脳内側領域切除術
広瀬貞雄日本医科大学名誉教授が開発した術式。

生理学的観点から

当時の標準的なロボトミーの術式は、前側頭部の頭蓋骨に小さい孔を開け、ロイコトームと呼ばれたメスを脳に差し込み、円を描くように動かして切開するというものであった。前頭前野と他の部位(辺縁系や前頭前野以外の皮質)との連絡線維を切断していたと考えられる。前頭前野は、意志、学習、言語、類推、計画性、衝動の抑制、社会性などヒトをヒトたらしめている高次機能の主座である。

歴史

ロボトミー

1935年、ジョン・フルトンとカーライル・ヤコブセンがチンパンジーにおいて前頭葉切断を行ったところ、性格が穏やかになったと報告したのを受け、同年、ポルトガルの神経科医エガス・モニスがリスボンのサンタマルタ病院で外科医のペドロ・アルメイダ・リマと組んで、初めてヒトにおいて前頭葉切裁術(前頭葉を脳のその他の部分から切り離す手術)を行った。その後、1936年9月14日ワシントンDCのジョージ・ワシントン大学でも、ウォルター・フリーマン (Walter Jackson Freeman II) 博士の手によって、米国で初めてのロボトミー手術が激越性うつ病患者(63歳の女性)におこなわれた。当時に於いて治療が不可能と思われた精神的疾病が外科的手術である程度は抑制できるという結果は注目に値するものであって世界各地で追試され、成功例も含まれたものの、特にうつ病の患者の6%は手術から生還することはなかった。また生還したとしても、しばしばてんかん発作、人格変化、無気力、抑制の欠如、衝動性などの重大かつ不可逆的な副作用が起こっていた。

しかし、フリーマンとジェームズ・ワッツにより術式が「発展」されたこともあり、難治性の精神疾患患者に対して熱心に施術された。1949年にはモニスにノーベル生理学・医学賞が与えられた。しかし、その後、抗精神病薬の発明と飛躍的な発展がされたことと、ロボトミーの副作用の大きさと相まって規模は縮小し、脳神経学では禁忌とまでにされて追い込まれる事になる。また、モニス自身もロボトミー手術を行った患者に銃撃され重傷を負い、諸々の施術が(当時としては)人体実験に近かった事も含め、槍玉に挙げられ廃れる事になる。

日本精神神経学会が1975年(昭和50年)に、『精神外科』を否定する決議を採択し、ロボトミー手術の廃止を宣言した事から、現在の日本において、精神疾患に対してロボトミー手術を行うことは、精神医学上禁忌とされている。しかし、精神障害者患者会の一つ、全国「精神病」者集団の声明(2002年9月1日)では『厚生労働省の「精神科の治療指針」(昭和42年改定)はロボトミーなど精神外科手術を掲げており、この通知はいまだ廃止されていない。』としている。

エガス・モニス

ポルトガルの政治家、医者(神経科医)。1949年にスイスの神経生理学者ヴァルター・ルドルフ・ヘスとともにノーベル生理学・医学賞を受賞した。受賞の理由は「ある種の精神病に対する前頭葉白質切截術の治療的価値に関する発見」である。

1936年、モニスと同僚のアルメイダ・リマは、当時すでに知覚を脳に伝える部分として知られていた視床と、知性と感情をつかさどる部分とされていた皮質に繋がる神経繊維を外科手術で切断することに世界で初めて成功する。この手術はそれから10年程で世界で広く行なわれるようになった。モニスの方法をアメリカのウォルター・フリーマン(英語版)とジェームス・W・ワッツ(英語版)が改良し、前部前頭葉白質切截法(ロボトミー)として確立した。それによりモニスは世界で広く知られ、名声はノーベル賞受賞という形で最高潮に達する。

ロボトミーは、主に統合失調症の治療に用いられたが、患者から人間性を不可逆的に奪う深刻な副作用が問題視されて、1975年頃にはまったく行なわれなくなる。現在では悪評の高い手術となっており、薬物療法が一般的となっている。

65歳のとき、自分の患者が放った銃弾が脊髄に命中して身体障害者になった。1955年ポルトガルのリスボンで死去した。

アメリカなどでは、現在でもロボトミー手術の被害で廃人になった当事者と、その家族たちが、エガス・モニスのノーベル生理学・医学賞受賞取り消しのための運動を行っている。

語の意味

人を「ロボット (robot)」 のようにしてしまうからロボトミー、という誤解があるようですが、ロボトミー(lobotomy)は、肺や脳などで臓器を構成する大きな単位である「葉(lobe)」を一塊に切除することを意味する外科分野の術語から来たものであるので、ロボットとは全く関係ないのである。ロベクトミー(lobectomy, 葉切除)と同義。ロボトミーでは「前頭葉切除」を意味し、「大脳葉にある神経路を1つ以上分断すること」と定義。肺がんなどのため肺の一部を葉ごと切除(例:肺下葉切除)することもロボトミーの一種であるが、臨床ではロベクトミーの方が用いられる。

日本

日本では1942年(昭和17年)、新潟医科大学(後の新潟大学医学部)の中田瑞穂によって初めて行われ、第二次世界大戦中および戦後しばらく、主に統合失調症患者を対象として各地で施行された。 日本では、1975年(昭和50年)に、「精神外科を否定する決議」が日本精神神経学会で可決され、それ以降は行われていない。日本では、このロボトミー手術を受けた患者が、同意のないまま手術を行なった医師の家族を、復讐と称して殺害した事件がある(ロボトミー殺人事件)。

名古屋大学医学部精神医学教室でのロボトミーを受けた患者の解剖では、前頭葉全体が空洞化されており、スカスカだったという。当時解剖した患者で一番多かったのはアルコール依存症であった。なお、同教室の医師が他の医師と手術の統計をまとめようとしたところ、手術記録がどこにもみあたらなかったという。これは前出のロボトミー否定の学会決議を受け、病院側が隠蔽したものと見られている。