統合失調症

数々の作品の中で登場する、それぞれの疾患。あらためて知識を持って、再度映画を観ますと、また違った見えかたがしてくるものです。みじかな症状からみてゆきましょう。

統合失調症とは、「連想分裂」を中核とする類似の症状の集合から構成される精神病理学、あるいは臨床単位上の診断・統計カテゴリーの一つである。疾患あるいは障害単位の存在自体がいまだ不明であり、疾患としては単一のものであるとは考えられておらず、多数の発症原因を持つ多数の疾患であると予測されている。かつては「精神機能の著しい分裂」を基礎障害とするという意味で意訳され「精神分裂病(せいしんぶんれつびょう)と呼ばれていた。この症状の担当診療科は精神科であり、精神科医が診察に当たる。

エミール・クレペリン

19世紀の脳病学者エミール・クレペリンが複数の脳疾患を統一的な脳疾患カテゴリーとして取りまとめた「早発性痴呆症」をスイスの精神科医オイゲン・ブロイラーが、その症状群の形容から1911年の著書『"Dementia Praecox oder Gruppe der Schizophrenien" (E. BLEULER 1911):早発性痴呆症あるいは精神分裂病群の集団』の中で定義・呼称した。

ブロイラーは当該症候群の特徴は「精神機能の特徴的な分裂を基本的症状として有するとして Schizo(分裂)、Phrenia(精神病)と呼んだ。ここで「精神機能」とは、当時流行した連合主義心理学の概念で、「精神機能の分裂」とは主に「連合機能の緩み」及び「自閉症状」を意味する。

主要な症状は、基礎症状として「連合障害(認知障害)」「自閉(自生思考等)」であり、副次的に「精神病状態(幻覚妄想)」など多様な症状を示し、罹患者個々人によって症状のスペクトラムも多様である。クレペリン、ブロイラー、シュナイダーが共通して挙げている特徴的で頻発の症状は「思考途絶(連合障害)」と「思考化声(自生思考)」である。

日本国政府には独自の診断・統計基準は無く、行政においてWHO国際疾病分類第10版 (ICD-10) を用いて診断・分類しており、当該マニュアルではF20になる。発病率は全人口の約1%程度と推計されている。

該疾患群は、精神障害の診断・統計カテゴリーの一つで、自閉症状と連合障害(認知障害)を基礎障害とする複数の脳代謝疾患群と考えられている。この精神疾患群に属する各症状が同根の神経生物学的基礎を有するか否かは、現在のところ全く不明である。クレペリンは死後脳解剖から前頭葉に類似の細胞変性を観察しているため早発性痴呆群を一つの統計カテゴリーとしたが、ブロイラーは相当多数の疾患群の寄せ集めであろうと予測しており、現在まで決着はついていない。ちなみに、ここでいう痴呆とは当時、精神の不調全般に使われていた用語で、いわゆる認知症の痴呆とは全く異なる。

単純型痴呆

  • 破瓜病
  • 緊張病

妄想性痴呆

当該疾患群に共通する症状は精神分裂症(精神機能の分裂症)と呼ばれる状態で、思考や感情がまとまりにくくなり、罹患者が本来有している知的水準や身体能力から期待される役割遂行能力が顕著に障害され、回復のために治療や社会的な援助が必要となる。本来当該疾患は疾患概念であるが回復の困難性・長期性から保健福祉行政上は(自己申告により)障害者概念が適用され得る。

根本的な原因は不明であるが、神経伝達物質のインバランス等の脳の代謝異常と心理社会的なストレスなど環境因子の相互作用が臨床的な発症の発端になると推測されている。心理社会的な因子としては「分裂病者の母親(ダブルバインド)」や「HEE(高い感情表出家族)」などが注目されている。発症率は約1%弱と推計され、日本全国では約79.5万人が罹患していると予測されている。自閉や連合障害、あるいは易疲労性からくる脳の疲弊によって、一部の患者では特徴的な幻覚や妄想を発症する頻度が少なくない。この妄想および幻覚症状は脳内の伝達物質のインバランスの可能性が強く主にドーパミン遮断剤の適量の投与によって高い確率で症状の抑制が可能であるとされる。近年では遮断剤(抑制剤)のみでなくドーパミン安定剤も開発され認知障害や陰性症状などの基礎障害への効果も期待されている。

柔狂

元々ドイツ語の Schizophrenie に対する訳語として、日本では明治時代に精神分裂病と訳された。Schizophrenie はギリシャ語の σχιζο+φρεν(分裂+横隔膜) から。これはギリシャ時代の医者が魂は横隔膜(和名:サガリ)にあると考えていたことに由来する。

本来、精神分裂病の「精神 (phrenie)」は心理学的意味合いで用いられた単語であり、「知性」や「理性」を現す一般的な意味での精神とは意味が異なる。ところが、「精神分裂病」という名称が日本では「精神が分裂する病気」→「理性が崩壊する病気」と誤って解釈されてしまうケース(統合失調症患者であっても、理性が崩壊するとは限らない)が見られた。患者・家族団体等から病名に対する偏見が著しく強いという苦情が多かった。そこで、2002年(平成14年)に日本精神神経学会総会によって英語の schizophrenia に対する訳語を「統合失調症」にするという変更がなされた。 名称変更でかかった費用の一部は治療に使われる抗精神病薬を販売している外資系企業から提供されたという。

江戸時代の日本

江戸時代の日本の医家の間では、「柔狂」や「剛狂」と呼ばれる精神疾患が知られており、それぞれヨーロッパでの「破瓜病」、「緊張病」に相当する病状であったとされている。中期の儒医・香川修徳(香川修庵)は著書『一本堂行余医言』に「狐憑きも野狐の祟りなどではない。被害妄想、誇大妄想、感情荒廃、強迫観念、自閉、不眠、幻想、抑鬱などは狂の症状である」との意味を記していた。